「部活で俳句」(今井聖)

見出しにつられて最後まで読んでしまった

「部活で俳句」(今井聖)
 岩波ジュニア新書

「生徒に頼まれてひらめいたのは、
 部員不足の俳句同好会と
 ダンス部の合体だった!」

amazonで見つけた
この紹介文に引かれ、
買ってしまった一冊です。

高校生の突拍子もない部活動ものは、
数年前に映画やドラマで
ブームになりました。
「ウォーターボーイズ」での
男子シンクロナイズドスイミング部、
「スウィングガールズ」での
高校生ビッグバンドジャズ、
「書道部」はたしかNHKの
「とめはねっ! 鈴里高校書道部」
でしたか。どれもこれも
懐かしいものばかりですが、
私は本書に
その流れを期待していました。

さて、読み進めて40ページ…。
ダンスをやりたいがために
俳句を詠む高校生の物語です。
これは面白い。
どんなストーリーが展開するのか!

と思いきや、41ページ目から始まる
第2章以降は、俳句の
鑑賞や創作についての解説本でした。
「ダンスと俳句のコラボ」という
新しい高校生新ジャンル部活動
青春感動ドラマを期待していた私は、
完全に肩すかしを食らった格好です。
当たり前です。
岩波ジュニア新書なのですから。
ぶつぶつ文句を言いながら、
それでも楽しく読み進めることが
できました。

第2章では、
高校生の創った俳句が多数紹介され、
「俳句は誰でも創れる」と
安心させられました。
第3章では、
現代の俳人(おそらく)の句を介して
「写生」の技法が示され、
俳句の材料はどこにでもあることに
納得させられます。
第4章、第5章では、
子規や虚子ら偉大な俳人の句も
紹介され、筆者の俳句観が
こんこんと語られるのです。

結局私は
「ダンスと俳句のコラボ高校生」の
見出しにつられてこの本を
最後まで読んでしまったのですが、
これは第1章の「ダンスにつられて
俳句部に入った高校生」と
同じなのでした。
著者にしてやられた!
ああ、そうか、第1章の高校生たちは、
この本の読者の暗喩だったのか!
周到に計算して
本書を構成しているのです。
著者は相当の手練れです。

もしかしたら自分にも俳句は作れる、
そしてこれまで以上に
俳句を楽しく味わうことができる、
そんな気持ちになることができました。
俳句は難しいものではなく、
楽しめるものなのです。
俳句は昔の人のつくったものではなく、
現代を生きる私たちがつくり、
味わうものなのです。
俳句は年寄りだけのものではなく、
若い人たちを含めた
全ての人たちのものなのです。
今を生きる中学生にお薦めします。

(2020.3.25)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA